俵ヶ浦半島の魅力発信!!|チーム俵

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March 24 2020

「高千穂ムラたび」代表・飯干淳志さんが、「チーム俵」部長たちに問う、「半島の未来に必要なこと」

「高千穂ムラたび」代表・飯干淳志さんが、「チーム俵」部長たちに問う、「半島の未来に必要なこと」
2016年度より、官民連携で取り組んできた俵ヶ浦半島の活性化プロジェクトでは、住民参加型のワークショップなどを経て策定された半島未来計画のもと、一般社団法人チーム俵のメンバーが中心となり、さまざまな取り組みを続けてきました。「半島Meets…」の最終回となる今回は、以前にチーム俵が視察に訪れたこともある宮崎県高千穂町の限界集落「秋元」を拠点に、「民宿まろうど」「まろうど酒造」「ムラたび農園」の3つの事業を軸にコミュニティビジネスに携わる「高千穂ムラたび」代表・飯干淳志さんをインタビュアーに迎え、これまでの活動を振り返り、改めて半島の未来について考えるために、チーム俵の4名の部長、山口昭正さん、森宗幸彦さん、中里竜也さん、山田信一郎さんが集まりました。

Q. 俵ヶ浦半島では2016年に半島未来計画を策定し、その実行組織として「チーム俵」が立ち上げられたと聞いています。計画というのは実行に移す過程でうまくいかないこともたくさん出てきますし、その中で色々な気付きもあったかと思いますが、まずはそれぞれがここまでの活動を振り返って感じていることを聞かせてもらえますか?

右奥が今回インタビュアーを務めてくれた「高千穂ムラたび」代表の飯干敦志さん。

山口:僕はチーム俵「トレイル部」の部長として、トレイルコースの整備のために県道の草刈りをしたり、ウォーキングイベントの企画・運営、展海峰にある売店「ツッテホッテ」の眺望を確保するための木の伐採などの活動に取り組んできましたが、地域のみなさんに協力してもらうことの難しさを感じました。中には大変な作業もあったのですが、なるべく地域の方たちに悪いイメージを与えずに参加を呼びかけることを心がけてきました。

チーム俵「トレイル部」部長の山口昭正さん。

中里:僕は2018年にオープンした「ツッテホッテ」の店長をしてきましたが、「ご当地部」の部長というチーム俵での役割以上に、ひとりの経営者としていかに利益を上げるかということをずっと考えていて、いまもその難しさに直面している最中です。ただ儲ければ良いという話ではなく、ちゃんと雇用をつくって地域に貢献しなければ本末転倒になってしまうのですが、他の人に負担をかけるのであれば自分で全部やってしまった方がいいと考えていたところがあり、いま振り返ると悪循環になっていたのかなと感じています。

「ご当地部」部長の中里竜也さん。

今回のインタビュー会場にもなった「ツッテホッテ」。

森宗:学校部では、2016年~2017年に野崎中、俵浦小、庵浦小という3つの小中学校が閉校したことを受け、これらの利活用が大きなテーマになっていました。地域のフラッグシップである学校がなくなってしまう中、子どもたちと地域の接点をいかにつくるかを考え、廃校になった体育館を開放し、地域の方たちに子どもたちの勉強や遊びを見てもらう「放課後子ども教室」などを実施してきました。ただ、廃校というのは一校丸ごと活用するのが色々と大変で、個人事業の規模ではほぼ不可能だと感じています。かといって、建物というのは人の手が入らなくなるとすぐに朽ちてしまいます。すでに建物自体が限界に近づいていて、かなり厳しい状況に追い込まれている施設もあります。

「学校部」部長の森宗幸彦さん。

俵ヶ浦半島にある廃校のひとつ、庵浦小学校。

山田:私は、空き家を活用した移住・定住・起業支援に取り組む「住まい部」の部長を務めてきましたが、俵ヶ浦半島はすべての地域が市街化調整区域に指定され、空き家活用における規制も多いため、まだ思うような成果は生まれていません。また、私はお寺の副住職として宗教法人の運営に十数年携わってきたのですが、「坊主丸儲け」などと揶揄されるようなお寺のイメージとはかけ離れた法的手続きや資料作成、経費管理など煩雑な作業を通して、法人運営の大変さを身を持って感じてきました。そうした経験があったので、形は違えど2018年にチーム俵を法人化する際には不安がありましたし、実際にクリアしなければいけないハードルがたくさんあるといまも感じています。

「住まい部」部長の山田信一郎さん。

Q.チーム俵の各部の連携についてはいかがですか?

森宗:トレイル部がトレイルコースに休憩スポットをつくるためにベンチづくりをしたのですが、その時に廃校の工作室を開放するなどの連携はこれまでもありました。

半島の木材を使ったベンチづくりの様子。

Q. この地域には以前から木工の文化はあるのですか?

森宗:竹の文化はありますが、木工に関してはないと思います。

Q. 地域で何かをする時には、もともとある文化や資源を生かしていくことが大切です。そういう意味では、廃校活用にしても海産物の養殖などは良いかもしれません。廃校活用の事例として、体育館などを使った養殖は結構ありますし、仮に漁業権がなくても、海水を学校に引き込み、養殖ができる環境をつくれれば誰にも文句も言われないはずです。そうしてつくった海産物をツッテホッテなどで提供することなどができれば、連携も強まるのではないでしょうか。

山口:チーム俵では、ツッテホッテという場所を事業計画の中枢に据えているので、トレイル部の取り組みにしても、トレイルに来てくれた人たちにいかにツッテホッテの存在を伝え、お店の売上につなげていけるのかということを考え、イベントなども企画してきました。ツッテホッテは直売所機能もあり、半島で農業を営んでいる人が商品を納められるので、ここに多くの人が来てお金を落としてくれることは地域への貢献にもつながると思っています。

ツッテホッテには、半島の農家さんが育てた作物などの直売コーナーもある。

中里:ツッテホッテをオープンするまでは各部が独立して活動している感じがあったのですが、お店ができてからは連携が増え、やっと繋がり始めた感覚があります。一方で、各部それぞれが収益を生む事業をするべきではないかという考えも自分の中にはあります。みんながツッテホッテにつなげてくれるのはありがたいですが、この場所を情報発信基地として活用してもらい、それこそトレイル部のウォーキングイベントなども単体で収益が上がる事業にしていけるのがベストだと思っています。

多くの人たちが訪れる俵ヶ浦半島のウォーキングイベントは、年に2回行われている。

Q.イベントは労力も非常にかかるものですよね。山口さんは、もし仮にウォーキングイベントをあと10年続けてくれと言われたらどうですか?

山口:正直荷は重いですね(笑)。これまでのイベントについても運営面に労力が割かれてしまい、来てくれるお客さんを楽しませるというところまでできていないと感じています。それなら、運営は外部の事業者に委託してしまい、僕たち地元の人間は来場者を楽しませる役割に専念した方がいいのではないかという気もしています。

Q.イベントをきっかけにファンをつくるというのは地域づくりの初期段階では大切なことですが、継続はなかなか大変です。理想は、イベントを開催しなくても多くの人がウォーキングに訪れてくれることで、そうした状況をつくっていくことが次のステップだと思いますし、今後はSNSなどを活用して地域の魅力を発信していくということも必要になってくるはずです。

Q. 地域の魅力を発信していく上では、誰に何を伝えるのかということも重要です。例えば、半島のトレイルコースをより多くの人に歩いてもらうためには、どんな人たちに訴求していくべきだと思いますか?

森宗:定年退職をしたばかりの人とかですかね。時間にも余裕があるでしょうし、健康への意識も高いはずなので、ウォーキングをしたいという人は多いはずです。

畑の間も通る半島ならではのトレイルコース。

Q. 間違ってはいませんが、先ほどあった「収益化」につながるような「歩く人」を探すべきです。人を呼び込むという時に、佐世保をはじめ近郊の人たちをイメージしがちかもしれませんが、外に目を向けてみると、ヨーロッパの人たちなどは良いターゲットだと思います。彼らはあまり知られていないような場所に行くことを好みますし、ヨーロッパでは1日に3時間以上歩きたいと思っている人がおよそ3割もいるというデータもあります。また、ヨーロッパの人たちはあちこちへ移動する日本人とは違い、ひとつの拠点にとどまり、料理などをしながら滞在を楽しむ旅行スタイルが主流です。そういう人たちがここに来れば当然さまざまな消費行動が起こるわけで、それこそ宿坊体験のようなことができたら絶対に彼らは喜ぶはずです。こういうことを考えていくことがマーケティングであり、そこで大切になるのは、同じ文化の中で暮らしてきた人たち同士で顔を突き合わせるだけではなく、外に目を向けていくことだと思います。

山田:半島未来計画の策定にあたって私たちは、「知ってもらう」「来てもらう」「滞在してもらう」「住んでもらう」という4つのステップを考えました。ただ、イベントなどで「来てもらう」ことまではできても、その先の「滞在してもらう」ための場がなかなか用意できていませんでした。何かを踏み出さないといけないと思っていたのですが、ここにきて山口くんが農泊ができる場所づくりに動き始めてくれています。移住・定住までの道はなかなか険しいと思いますが、まずは次のステップに進んでいきたいですね。

山口:半島でも耕作放棄地が増えているのですが、日本全体の人口が減っている中で、いままでと同じように仕事に取り組んでいくことは難しいだろうし、いかに農業に付加価値をつけていけるかがカギだと思っています。そのひとつのやり方が農泊だと思っているのですが、これは以前に飯干さんのところに視察に伺ったことが大きなヒントになっています。宿泊して食事もしてもらうことができれば、こちらも農作物や生産者のことなどを伝えられるし、こうしたやり方が俵ヶ浦半島には向いているのかなと。

農泊ができる施設づくりを山口さんが中心となって進めている。

Q. 移住者の受け入れというゴールがあるなら、その前のステップとしていま山口さんが取り組んでいることにみんなで追随すればいいと思います。ツッテホッテや農泊など自分たちの軸になるものを発展させることで、チーム俵以外の地域の人たちとの協調性も生まれてくれば、動きはさらに加速するはずです。そうした良い循環をつくっていくことで地域社会全体が豊かになるはずですし、この地域が好きになり、移住しようと思う人もでてくるかもしれません。

Q.俵ヶ浦半島は美味しいお魚が穫れるにもかかわらず、それを食べられる場所がほとんどありませんよね。例えば、漁師さんに協力してもらい、この辺で穫れる魚で炙り揚げをつくってツッテホッテで提供したら、それが名物になるかもしれないし、漁師さんにとっても直接お客さんの反応が見られる貴重な機会になるかもしれない。そうしたことを色々試していく中で事業にもっと幅が出てくるのだと思います。

中里:色々とアイデアがあったとしても、それを実行するためには資金が必要で、そこが僕らの足かせになっているところがあります。ツッテホッテも経営が決して順調ではない中で、新しいチャレンジをするのはなかなかハードルが高いというのが正直なところです。

森宗:色々なところに視察に行く度に凄いなとは思うけど、自分たちの生活もある中で、はたして借金してまでそれをやるのかと言われると、なかなか難しいところがあるよね。

Q. 大がかりな取り組みを見ると腰が引けてしまうかもしれませんが、中には工夫してコストをかけずにやっている人たちもいます。いきなり一発当てようとするのではなく、一つひとつ積み上げて、徐々に資金力を蓄えていくという考え方が大切です。

中里:いま言われたような炙り揚げが人気商品になるようなこともあり得るとは思いますし、実際に漁師などのツテもあるのですが、石橋を叩いても渡れないような状況の中で行動する勇気というものが欲しいんです(笑)。

Q. 魚なんて売れるかわからないと想像だけで話していても何も変わりません。成功している事業というのはたくさんの失敗の上に築かれているもので、失敗が当たり前くらいの気持ちが持つことが勇気につながるはずです。一度やってみた経験というのは成功、失敗に関わらず必ず実になりますし、人の力に頼らず、まずはやってみることに価値があるんです。

中里:飯干さんは近所の人たちが育てたお米を買い取ってつくったどぶろくや甘酒を全国に展開していますが、始めるにあたって勝算はあったのですか?

飯干さんが代表を務める「高千穂ムラたび」の酒造で手掛ける主力商品「ちほまろ」。甘酒を乳酸発酵させている。

Q.勝算があったというよりは、お客さんのニーズに合うものをつくっていったというのが正しいと思います。何かをしようと思った時にいきなり市場で売るのではなく、まずはテストをして色々な意見を聞くというのが事業の鉄則ですし、自分の思いだけで形にしたものは商品にはなりません。また、最初から村人の米を買い取っていたわけではなく、自分の田んぼ2~3反からスタートし、販売量が増えていく中で隣の田んぼのお米を買い、それが村全体に広がっていったんです。繰り返しになりますが、少しずつ積み上げていくことが何よりも大切なんです。

山口:まずはひとつつくって動いてみるということなんですね。そこで良い結果が得られれば、周囲に自分もやってみようという人が出てくるかもしれない。

中里:飯干さんを行動に掻き立てるモチベーションは何なのですか?

Q. 次の時代の農村社会をつくるために何ができるのかということです。地域づくりなどもそうですが、何のためにそれをやるのかということが自分の中で明確になっていないと、結局つらいだけになってしまうんですよね。チーム俵にしても、何のためにこの組織をつくったのかということを改めて見つめ直してみる必要があると思うし、それが明確になれば、目的に到達するために何が必要なのか、みんなでアイデアを出し合うことができますよね。小さなことからでもまずはそれをやってみることで学べることがたくさんあるはずだし、それを積み重ねていくことが地域への貢献になり、次世代にもつながっていくのだと思っています。

プロフィール
インタビューされた人
チーム俵
俵ヶ浦半島未来計画を実行に移していくため、2017年4月に半島のまちづくり組織として発足した「チーム俵」。2018年4月には法人化し、「ご当地部」「トレイル部」「住まい部」「学校部」「宣伝部」5つの部活(プロジェクトチーム)をスタート。半島に暮らす山口昭正さん、森宗幸彦さん、中里竜也さん、山田信一郎さんらが理事として各部の部長を務める。2017年から3年間は佐世保市による重点支援期間であり、市や地域外の専門家チームがサポートしていたが、今後は部長たち自らが活動をリードしていく予定。

インタビューした人
飯干敦志(「高千穂ムラたび」代表)
54歳で高千穂町役場を早期退職し、「持続可能な村づくり」に取り組む。宮崎県高千穂町の40世帯、人口100人の秋元集落で、UIターンの若者たちと共に民宿やドブロクづくり、花卉や夏イチゴの栽培、イチゴやお茶の加工品製造販売などを営む。高千穂町観光協会と連携して高千穂ムラたび活性化協議会を運営。スピリチュアルや大自然、伝統文化などを組み合わせながら農村に新たな価値を創造するビジネスを手掛けている。

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