俵ヶ浦半島の魅力発信!!|チーム俵

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December 23 2019

半島の魅力を味わうウォーキングイベント「第16回 展海峰コスモスウォーク」を開催!

清々しい秋晴れの日、10月13日に毎年恒例の「展海峰コスモスウォーク」を開催しました。
前回、3月に予定していた菜の花ウォークが天候不良のため中止となり、約1年ぶりのウォーキングイベントです。今年のコースは俵ヶ浦歴史遺産トレイル。約10kmのロングコースですが、折り返し地点となる日本遺産「佐世保要塞 丸出山観測所跡」からは、九十九島の絶景を眺めることができる半島の魅力が詰まったコースです。
 

コスモスが咲き誇る展海峰を拠点に開催したコスモスウォーク。


 

今年で16回を迎える「展海峰コスモスウォーク」は、俵ヶ浦半島の4町内会の親睦の場として16年前にスタート。各町内のお母さん方が腕によりをかけて作った手料理の屋台が並び、近隣の多くの人が楽しみにする恒例イベントとして成長してきました。

イベントで歩くコースは、各町の住民の皆さんが、見どころなどを出し合って作ってきた俵ヶ浦半島トレイルの4コース。それぞれが町の魅力を伝えるのもで、ウォーキングイベントは、参加者の皆さんと一緒に半島の魅力を楽しむ大事な機会です。

イベントの準備は、広報から始まって各方面への連絡調整、コースの草刈りや清掃、各町からの屋台出店やふるまいの準備、当日の運営や警備など、多くの人手が必要です。16年続けてきた恒例のイベントも、各町の負担が重く感じられるようになっていました。

そこで昨年から実施主体をチーム俵に移し、各町内会の協力で開催するよう体制を整え、新しい企画も少しずつ盛り込んでいくことになりました。

俵ヶ浦町の山口館長。イベントでは町内会の皆さんと一緒に参加者をお出迎え。


 

参加する皆さんに楽しんでいただけるように、景品が当たる抽選会企画や振る舞いのぜんざいなどを用意。地域で採れたミカンや野菜など、抽選会の景品にと持ち寄ってくれる方々もいて、地域の皆さんに支えられながら準備をしてきました。

今回のウォーキングイベントを担う、チーム俵トレイル部副部長の長嶺達夫さんは、
「準備の中でもウォーキングコースの草刈りが大変なんですが、町内会でやっている草刈りが終わった後にコースの草刈りをしてくれた方もいたそうです。この時期、各町内会も行事などで忙しいんですが、皆さんの協力のおかげで無事当日を迎えることができました。あと、一番気になっていたことは天候。前回、中止の判断をした後に天候が回復したという苦い経験もあって、その判断が難しく、中途半端な天候にはなってくれるな、と思っていました。」
とこれまでを振り返ります。
 

そして迎えた開催当日。心配された台風も逸れ、市内外より200人を超える方々が集まりました。

スタート前、参加者で賑わう展海峰。


 

受付では、「木のものづくりプロジェクト」で製作してきたバードコールの販売も行っています。俵ヶ浦町の前町内会長、湯浅さんが店番に立ってバードコールを鳴らし、まるで鳥を呼ぶようにお客さんを呼び込みます。早速バードコールも売れ始めました。

ウォーキング参加者にバードコールを紹介する湯浅さん


 

ウォーキングイベントは、俵ヶ浦半島の取り組みを多くの方々に知っていただく良い機会。バードコールを始め、取り組んでいる料理メニュー開発のテスト販売なども行なっています。

9時30分となり開会式。主催・チーム俵の森宗幸彦さん司会による第一声に始まり、来賓の方々のご挨拶、半島内の老人ホーム・海南荘スタッフによるラジオ体操と続きます。

開会式でコースの紹介や注意事項などの説明を行うチーム俵の森宗さん。


 

スタートして最初に展海峰園内のコスモス畑を巡るのは、前回から取り入れたアイデア。今年は8月の大雨や台風の影響もあり開花がやや遅れたものの、咲き渡るコスモスに参加者の皆さんの笑顔が広がります。

展海峰のコスモスを眺めながらのスタート。


 

近年は半島以外から来られる参加者も多くなり、中には毎回参加していただいているリピーターも。「今年は距離が長いねー」と言いつつ、張り切っておられるご様子。

展海峰を出てしばらく歩くと、休憩ポイントに到着。
こちらでも地元の方々がお茶や半島の蒸かし芋、みかんなどを振る舞います。今回は、「ハーブプロジェクト」で栽培しているハーブを使ったアイスハーブティの試飲も行いました。歩き疲れ始めた頃にすっきり飲めるハーブティは大好評。販売を熱望する声もいただき、これからの商品開発の励みになります。

中継ポイントでは地元の方々によるおもてなし。すぐに人だかりが。

みかんや柿、ふかし芋など、たくさんのおもてなしで、みなさんゆっくり休憩を。

俵ヶ浦半島で栽培したハーブを用いたハーブティを提供。


 

またしばらく歩くと、折り返し地点の日本遺産「佐世保要塞 丸出山観測所跡」。絶景を前に長居してしまう方々ばかりで、あっという間に人だかりが。


 

ちょうど稲刈りの時期でもあり、掛け干しをする姿を横目にウォーキングは続きます。
我先にと先頭を進む子どもたちや、のどかな景色を楽しみながら歩く人、周りの流れに乗って雑談しながら歩く人、自分のペースを守りながら本格的に歩く人。皆で一斉にスタートするウォーキングイベントですが、皆さん自分のスタイルでトレイルコースを楽しんでいます。

稲刈りシーズンのこの日は、ちょうど掛け干しの作業を行うご家族も。


 

ウォーキングゴール後は恒例のぜんざい。今回も野崎町の料理名人・森宗カツ子さんが丁寧に炊き上げた小豆です。疲れた体に甘さが染み渡る絶品。
展海峰の屋台には、地元のお母さん方のチーム「マザーズたわらんだ」による「季節のおこわ」や「手作り魚ロッケ」、青葉の散歩道の「スペシャリティコーヒー」のほか、「野崎仕込みの押し寿司」、「鶏の炭火焼き」が並びます。ウォーキング参加者に加え展海峰を訪れたお客さんも混じり、商品が多数完売する盛況ぶりでした。

参加者の疲れを癒す、絶品のぜんざい。

マザーズたわらんだのおこわや魚ロッケはすぐに完売。


 

終了後、長嶺さんは、
「参加した皆さんの様子を見られたのはゴールされてからだったんですが、皆さん充実されているようで良かったです。参加人数も満足いくものでした。地元からの参加者が少なかったことはひとつ残念でしたが、告知や運営面なども工夫したり、人手不足なところを解消したりしていければと思います。」
と、イベントをさらに良くしていきたいと語ります。

これまでウォーキングイベントを開催してきた俵ヶ浦半島開発協議会の大谷会長は、
「若手の皆さんでこうやって続けていってもらえるのは嬉しいですね。チーム俵に移って色々と試している段階かと思いますが、今でも町内会の役割はありますし、チーム俵と町内会とでうまいやり方ができていけばと思います。」
とのこと。

ウォーキングイベントをきっかけに初めて俵ヶ浦半島を訪れる方も多く、半島の魅力を知っていただける絶好のチャンスです。同時に、半島住民の方々が集まる貴重な機会であり、地域の皆でお客さんをおもてなしできる時間でもあります。

これからも皆さんに楽しんでいただけるウォーキングイベントを企画していきたいと思います。
次回は3月、春の菜の花ウォークです。皆さんのお越しをお待ちしています!
 

December 7 2019

「俵ヶ浦半島活性化プロジェクト」プロデューサー・佐藤直之さんが、issue + design代表・筧裕介さんに聞く、「計画を実行する上で大切なこと」

2017年より進められてきた佐世保市・俵ヶ浦半島の活性化プロジェクトにプロデューサーとして関わってきたルーツ・アンド・パートナーズの佐藤直之さん。福岡に拠点を置き、俵ヶ浦半島以外にもさまざまな地域のまちづくりに関わっている佐藤さんがインタビューするのは、数々の社会課題の解決に取り組んできたissue+designの代表で、地域活性化のためのデザイン領域の研究や執筆なども行っている筧裕介さんです。ブリックモールさせぼを会場に公開イベントとして行われたインタビューでは、佐藤さんが半島活性化プロジェクトを進める中で感じてきた課題や問題意識をベースに、筧さんにさまざまな質問を投げかけました。

Q. 私たちは、俵ヶ浦半島の未来の道標となる「半島未来計画」を、地域住民の方たちとつくりました。そして、この計画を実行していくまちづくり団体として、地元の若手リーダーたちを中心とした「チーム俵」を立ち上げ、町内会などとも連携しながらさまざまな活動に取り組んできました。私は、民間企業という立場からこの活動をサポートするチームに加わり、プロデューサー的な役割を担っているので、今日は外部の視点からさまざまな地域づくりに関わられている筧さんに色々お話を伺いたいと思っています。まずは、筧さんが地域の仕事に関わるようになったきっかけからお聞かせ頂けますか?

筧:地域の仕事をするようになってから10年以上が経ちますが、もともと僕は広告のデザインの仕事をしていました。仕事自体は面白かったのですが、広告にはつくっては消えていくような刹那的なところがあって、自分がつくったものが世の中にしっかり残り、役に立っていくようなことはできないのかと思っていました。周りの人たちに比べて、僕はそこまで広告の仕事が好きではないかもしれないと感じていたこともあり、もっと熱中できて、なおかつ他の人があまり足を踏み入れていない領域として、社会課題をデザインの力で解決するようなことはできないかと考え、issue+designを立ち上げました。そして、神戸で防災をテーマにしたデザインプロジェクトに関わったことがきっかけとなり、徐々に地域に関わりながら仕事をするようになっていきました。

壇上のissue+designの筧裕介さん(右)と、ルーツ・アンド・パートナーズの佐藤直之さん(左)。

Q. そこから生まれた「できますゼッケン」は、東日本大震災の時にも活用されていましたよね。もともとはまちづくりよりも、社会課題の解決が筧さんの大きなテーマだったのですね。

筧:はい。その後、神戸で自殺やうつ病対策、孤独死の問題などに関わる仕事をしていく中で、日本の地域にはさまざまな最先端の社会課題があることが見えてきました。そして、地域というある程度限られたフィールドで課題解決に取り組んだ方が良い仕事ができるのではないかと考えるようになっていきました。その頃から、都市部よりも中山間地域や離島地域で仕事をする機会が多くなり、社会課題から地域課題の解決に仕事のフィールドがスライドしていったんです。

災害時、ボランティアの力を最大限活用するために「自分ができること」を示す「できますゼッケン」。

Q.筧さんは大学院に通われたり、数々の著作を出されたりしていますが、こうした研究活動と現場での仕事の関係については、どう考えていますか?

筧:実践をしっかりしなければ、研究をしたり、理論を考えることもできないと考えています。また、親が転勤族で、僕は故郷と言える場所がない人間だということもあり、特定の地域に根ざして何かをするよりは、どの地域にも共通してあるような課題を解決する手段や方法論を、できるだけわかりやすく、誰もが使える形にして伝えることが自分の役割だと思っているところがあります。だから、さまざまな地域での実践から得られた知見を理論化し、本にするという作業を続けているんです。

筧さんの新著。SDGsと地域づくりの関係がわかりやすくまとめられている。

Q.俵ヶ浦半島の未来計画づくりにあたって、筧さんが指揮を取った高知県佐川町の総合計画についてまとめられた本などを読み、参考にさせて頂いた部分もありました。佐川町のプロジェクトでは、住民へのヒアリングを非常に丁寧にされている印象を受けたのですが、どのようなプロセスで計画づくりが進められたのか改めてお聞かせください。

筧:佐川町には2013年から関わっているのですが、当時は街全体に活気がなく、地域のコミュニティもバラバラの状態でした。街に前向きな雰囲気があまりない中で新しい町長が就任したのですが、町長がまちの未来のヴィジョンづくりを公約として掲げていて、そのお手伝いを我々がさせてもらうことになりました。1年目は役場職員の意識向上や地域住民との関係性づくりをテーマに、役場の方たちとのワークショップや、町民の方たちへのヒアリングなどを行いました。その後2年にわたって、住民参加型のワークショップを計18回行い、最終的にはまちで最も大きなホールに約300人を集め、街の未来をついて話し合ってもらうワークショプを実現することができました。

佐川町で行われたワークショップの様子。

Q. 住民参加のワークショップは集客が大変だと思いますが、これだけ多くの人たちを巻き込むことができたのは、やはり住民の方たちと丁寧に関係性を築いていかれたからだと思います。

筧:ワークショップを始めたばかりの頃は、住民の方たちもそこまで乗り気ではなかったと思いますが、参加した人が楽しかったからと周りに声をかけてくれるようになったんです。僕は地域でプロジェクトを進めていくにあたって、とにかく住民の方たちが参加する場を充実させ、楽しい体験をしてもらうということを大切にしていて、そのための設計を入念にしています。こうした積み重ねによって、ワークショップを重ねるたびにどんどん参加者が増えていきました。そして、最終的には、住民のみなさんがやりたいと思っていることをベースに、25のまちの未来像をまとめました。

佐川町での取り組みは一冊の本にまとめられている。

Q. 地域の仕事をしていると、ほとんどの地域が少子高齢化で人口が減少しているにもかかわらず、その土地で暮らしている人たちはあまりリアルな危機感を持っていないのが実態だと感じます。だからこそ、まちの未来のヴィジョンや計画は、いかに住民の方たちが自分ごと化できるようなものに落とし込めるかがポイントだと感じています。

筧:役場の職員などは地域の課題を認識し、解決に向けて動こうとするのですが、地域住民にとってはそれがあまり重要ではなかったりするんですよね。だから、佐川町の25の未来像では、こんな未来を目指しますという書き方はせず、住民のみなさんがこんなことをしてこのまちを楽しみますという未来を描きました。結局計画というのは住民の方たちが実行していくものになるので、まずはその人たちが10年先にいまより楽しくこのまちで暮らせるかというところから考えていくべきだと思うんです。また、地域の未来ヴィジョンというのは、企業理念のように明確なゴールを設定するようなものではなく、ゆるやかにみんなが同じ方向を見ることができ、そこに何かしら自分に関係する内容が盛り込まれているということが大切なのではないでしょうか。

今回初めて佐世保に来たという筧さん。

Q. 佐川町の25の未来像は、それぞれ実現に近づいているのでしょうか?

筧:25の未来像は、すべて実現に向けて取り組みが進んでいて、すでに形になっているものもあります。地域づくりの仕事をするようになって、東京などのビジネスの世界とはまったく時間の流れ方が違うということがわかったのですが、この未来像についても進捗具合はさまざまです。行政の担当者などは限られた時間内で何かしらの結果を出そうとしますし、僕自身結果を出さなければいけない立場でもあるので、最初は住民の方たちのお尻を叩きたい気分だったのですが(笑)、住民の方たちからすると1年という区切りには何の意味もないんですよね。そんなことよりも、地域の人たちがやりたいと思うタイミングに合わせて、少しずつプロジェクトが立ち上がっていくという状態を大切にした方が良いということを、このプロジェクトを通して学ばせてもらっています。

インタビューは初めてということで緊張していた佐藤さんも、時間とともにリラックスしてさまざまな問いを。

Q.ゆるやかに進行している25のプロジェクトに対して、issue+designはどんなフォローをしているのですか?

筧:計画をつくってからの2年間は進捗確認の場を持つなど我々も色々サポートしていたのですが、いまは特別なフォローはしていません。ただ、25の未来像の中で、「ものづくり産業を育てる」「プログラミングとロボット教育」に関しては、我々がプレイヤーとなって計画の実行にあたっています。前者では、自伐林業から新しい仕事をつくることを目的に、「さかわ発明ラボ」というデジタルファブリケーション工房をつくり、後者については、小学6年生を対象に、地域の素材を集めて動物のロボットをデザインし、プログラミングで動かす「さかわロボット動物園」というプログラムを、来年度からまちのすべての小学校でスタートさせる予定です。

さかわ発明ラボ

ロボット動物園で生まれた作品たち。

Q.俵ヶ浦半島でもチーム俵の中のトレイル部というチームが、半島の景観を良くするために伐採した木でベンチをつくったことがありました。ただ、こうしたボランティアに近い取り組みは継続がなかなか難しいところがあると感じています。佐川発明ラボでは、林業から新しい事業をつくることを目的にされていますが、具体的にはどんな取り組みをしているのですか?

筧:この工房を通じて、まちに新たな熱を生み出すことを目指しているのですが、熱のつくり方というのはいくつかあるんです。まずは魅力あるヴィジョンをつくることで地熱のようなものが自然に生まれるというのが理想ですが、これはそう簡単ではありません。また、別の方法として、外からの新しい熱と混ぜ合わせるというアプローチもあり、さかわ発明ラボではこれを意識しています。その中で、地域おこし協力隊の枠で「発明職」というものをつくり、まずはインターンシップで2泊3日で佐川町に滞在し、まちの資源を活用して工房で色々な発明をしてもらうという取り組みを行っていて、結果的にアーティストなどさまざまな人たちがこの4年間で20名ほど移住しました。また、未来像のひとつとしてあった「散歩しやすいまちづくり」と連動する形で、散歩のために必要なベンチをつくるワークショップを住民の方たちと行ったりもしました。さらに、地元の事業者の技術と発明ラボのテクノロジーをかけ合わせて新しい事業をつくるような取り組みもしていて、その中で昔からの住民と移住者の交流なども生まれています。

住民がデザインから携わった個性豊かなベンチ。

Q.筧さんのお話を聞いていると、住民のアイデアや意欲を形にしていくことを非常に大切にされているように感じます。

筧:そうですね。あまり計画を忠実に実行している感覚はなく、出てきたアイデアはどんどん手を動かしながらみんなで取り組んでいきましょうというスタンスですね。地域の中には、熱心に趣味の活動をされている方などもかなりいらっしゃいますが、あくまでもその人がやりたいことをベースに、それを外に開いたり、他の人とつなげるということを意識しています。まず地域に課題があり、それを解決するために人を探すという順番になりがちですが、それだとうまくいかないケースが多いんですね。一方で、その人がやりたいことを後押ししていくという視点に立てば、まちのプレイヤーになりうる人というのはまだまだいるんじゃないかと感じています。

インタビューは公開形式で行われ、平日夜にも関わらず佐世保市内外から多くの方が来場しました。

Q. 俵ヶ浦半島でも、未来計画をつくり、チーム俵を中心にさまざまなプロジェクトを進めていく中で、ここにきてようやく地元の人たちが自ら動き始めたように感じています。例えば、半島では畑を持っている方が多いのですが、そういう人たちが歳を重ねて、もう重たい野菜はつくりきれないという状況の中で、ハーブをつくろうというアイデアが生まれ、地元の人たちが動き始めているんですね。こういう自発的なチャレンジが生まれつつある中で、いかに楽しく続けてもらえるかということがポイントになるのではないかと感じています。

筧:地域に足りないものを補うために外から人を呼んできても、あまりうまくいかないことが多いんですよね。逆にうまくいく時というのは、必ず必要なタイミングで必要な人との出会いがある。だから自分が地域に関わる時は、そこにどんな人たちがいて、どういうチームで地域の課題に挑んだら最大のパフォーマンスが発揮できるかということを常に考えています。ひとつ先くらいまでのつながりの範囲内でできることをやっていくことが最も大事で、それを続けているうちに、また新しいつながりやチャンスも生まれるのではないでしょうか。

俵ヶ浦半島でハーブの植え付けを専門家から教わる住民たち。

Q.佐川町では、地元の人たちがやりたいことをベースにプロジェクトのアイデアやプロトタイプが生まれ、それをいよいよ可視化していくという段階で、初めて専門家に協力を仰いでいるような印象があります。

筧:あくまでもそのプロジェクトをやりたいと思っている住民の主体性を尊重し、それを後押ししていく中でその人たちだけでは形にできない部分が出てきたら、地域の中の専門家や地域おこし協力隊などにつなぎ、それでも足りなかった時に初めて我々を含めた外部の人間がサポートするというケースが多いです。計画通りに物事は進まないという前提に立ち、あるタイミングで地域から湧き出るように何かが生まれてきた時に、それを後押しできるように準備を整えておくということが自分たちの役割だと思っています。まちにプロジェクトを起こしていくというのはそういうことなんだというのは、我々も地域と関わる中で勉強させてもらったことですね。

佐藤さんによる公開インタビューのレポートはこちら。
「気づきの多かった「半島meets公開インタビュー」、盛会のうちに終了。」

 

プロフィール

インタビューされた人
筧 裕介 (issue+design 代表)
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任教授。博士(工学)。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。2008年issue+design 設立。以降、社会課題解決、地域活性化のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。 著書に『持続可能な地域のつくり方』『ソーシャルデザイン実践ガイド』『みんなでつくる総合計画』『震災のためにデザインは何が可能か』など。グッドデザイン賞、日本計画行政学会・学会奨励賞、カンヌライオンズ(仏)、D&AD(英)他受賞多数。2019年7月より慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任教授。

インタビューした人
佐藤直之 (ルーツ・アンド・パートナーズ 代表)
大阪府生まれ。2004年に建設コンサルタント会社に入社、九州各地の公共交通の再生プロジェクトや交通政策、まちづくりプロジェクトに従事。「地域に密着したまちづくりに関わりたい」という思いから、九州大学の博士課程に入学。NPO法人や地域活性化プロジェクトの事務局長を複数務めながら、福岡市や唐津市、佐世保市などの地域密着型のまちづくりに携わる。2010年、唐津市に設立されたまちづくり会社に入社。商店街再生、集客事業、建物のリノベーション・再生をはじめとして、中心市街地活性化に関する様々なプロジェクトの企画・プロデュースにどっぷりと浸かり、地域密着型のまちづくりの難しさ、やりがいを学び、まちづくりプロデューサーとして独立の道を決断する。2013年にRootsを開業、2016年、株式会社ルーツ・アンド・パートナーズを設立。「俵ヶ浦半島活性プロジェクト」では住民をサポートするチームのリーダーを務める。

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