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一般社団法人REPORT SASEBO中尾大樹さんの阿久根(鹿児島県)訪問記
中尾と申します。
俵ヶ浦半島に関わり始めて6年。ボランティアからスタートし、市役所の担当を経て、今やただのファン。そんな僕が(ある意味)半島を代表して働かせてもらう日が来るとは!光栄です。
今回のミッションは、今年度、半島振興の第1ステージが終わろうとしている中、今なお残る「どうやって地域の人を巻き込んでいくのか」というテーマについて、鹿児島県は、阿久根市で活動する石川秀和さんへのインタビューを通じて、学びを持ち帰るというもの。初めての阿久根、新たな出会いに半分期待、半分緊張しながら佐世保から4時間車を走らせました(同行した仲間が)。

阿久根の海は広い!
石川さんの印象は、「柔らかくも自信と覚悟を持った人」。
ゆかりもない阿久根に来たのは、ほぼなりゆきとのこと。にも関わらず、行政が動かしていた観光協会や道の駅をよそものである自らが主導し、株式会社にしてしまう(しかも、地元の企業に出資を募るというありえない手法で)など、常軌を逸したことを平然とやってのけてしまうパワーにまず圧倒されました。

一番左が石川さん、ひたすらメモをとる僕。(右から3番目)今回は視察も兼ねて佐世保から5人のメンバーで行きました。
その実行力やモチベーションの源泉は、当初、京都などでのリノベーション事業における商業的な成功体験や、社会課題解決に対するやりがいにあるのだろうと予想していました。それは半分正解で、半分間違い。インタビューを経た今、彼は、たぶん「場づくり」の面白さに取りつかれてしまった人なんだと感じています。(インタビュー参照)僕にも似た部分があって、公務員なのに、借金をしてカフェを作るなど、はたから見れば謎のリスクテイカーなのですが、僕は僕で、自分の居心地のよいと思う場所を作りたいだけなんだ、ということをインタビューしながら思い出しました(よく忘れます)。

石川さんがリノベーションを手がけた阿久根の物件をいろいろ案内してもらいました。ここはお肉屋さん。

老舗の醤油屋さんの直営店。

塩屋の倉庫をリノベーションしたゲストハウス。
石川さんにとっても、最初、佐世保から来た僕ら一行がなんなのかよくわからなかった(なぜなら半島で生活する当事者ではないから)と思うのですが、一通り、阿久根を案内していただいた後の飲みの席で、自分たちがやっていること(主に借金)を話してから、ある種の仲間、あるいは同じ道を行く先輩としてのまなざしで、色んなぶっちゃけ話、苦労話をしてくれて嬉しくなりました。
そして、「場づくり」と「稼ぐ」という、なかなか両立し難い胃が痛くなるような取組みに魅せられてしまった(ハマってしまった)のは、僕らだけではなく、チーム俵もそうだと思うのです。

夜は地元の方と交流会、阿久根は水産業が盛んということもあってみな水産関係!
石川さんから学んで持って帰りたい考え方の一つは、「切り分ける」ということ。ただでさえ、わかりにくく面倒な取り組みなのだから、場づくり/資金づくり、やりたいこと/やるべきこと、個人でやること/チームでやること、役所がやること/民間がやること、など頭を切り分けて整理しておくこと、またそれをチームで共有しておくことは、長期戦に楽しく取り組む上で、とても実用的な考え方だと思いました。
例えば、お金は、あらゆる活動を行う上で大きな力となってくれるものですが、非営利な活動に不用意にお金を持ちこむことで、関わる人々のモチベーションや人間関係を蝕むことがあります。僕も経験上あります。それは元々志を同じくして集まったチーム発足の経緯を考えれば、とてもつらいことです。これは、切り分けて整理するとよい!
また、「距離があるから繋がれる」ということ。地元のとても近いコミュニティの中では、逆に共有しにくいテーマもあったりします。そんな中、他地域に同じ気持ちや活動を行う仲間がいることは、ノウハウを共有したり、モチベーションを維持する上でとても意味があることです。石川さん、佐世保にも来てくれるってよ!

実は、僕以外のメンバーも石川さんにインタビューしました。写真は、東京から佐世保にIターンした五島さん。
地域をいきいきさせる手段として「観光」がもてはやされている時代です。半島やリポートの活動でももちろん意識しています。でも、今回改めて思ったのは、本当の意味で差別化できる観光資源なんてない、ということでした。阿久根の夕陽と九十九島の夕陽、誤解を恐れず言えば、あんま変わんない。でも、また阿久根に自分が行くだろうと思うのは、石川さんとその仲間たちとの出会いがあったから。そういう意味でも、色んな地域に色んな友達を増やしていくのは、楽しくて実利も兼ねた最高なことだなと感じました。
佐世保や半島もそんな人々が集まる「PORT=港」になればいいな、なっていくだろうと思います。がんばろうっと。
「一般社団法人REPORT SASEBO」代表・中尾大樹さんが、「まちの灯台 阿久根」代表(鹿児島県阿久根市)・石川秀和さんに聞く、「地域の仲間を巻き込む方法」
佐世保市俵ヶ浦半島の未来に向けて、住民参加のワークショップなどを経て2017年3月につくられた「半島未来計画」。今回インタビュアーとなる中尾大樹さんは、佐世保市役所の当時の担当者として、地域住民との関係性を築きながら、この計画づくりに尽力した人物です。その中尾さんがインタビューするのは、京都で古ビルのリノベーション事業などを手がける会社を経営した後、2015年に鹿児島県阿久根市に移住し、現在は観光連盟の機能を引き継ぐ形で2018年に新設された株式会社「まちの灯台阿久根」の代表を務めている石川秀和さんです。役所の担当者としての役目を終えた後も、一般社団法人REPORT SASEBO(以下、リポート)を立ち上げ、俵ヶ浦半島に継続的に関わっている中尾さんが、石川さんに聞きたいこととは?
Q. 佐世保にある俵ヶ浦半島は、自然豊かな九十九島の海と、米海軍や海上自衛隊が基地を置く佐世保港軍港としての海に挟まれ、佐世保のアイデンティティが現れているとても面白いエリアです。僕は市役所の職員として、半島の未来計画づくりに関わってきましたが、担当を外れたいまは、新たに立ち上げた法人、リポートのメンバーとともに、俵ヶ浦半島と佐世保の市街地という2つのエリアを活動のフィールドに据え、地域の魅力を発信していくような活動をしていきたいと考えています。活動を進めていくにあたって、仲間の巻き込み方や活動資金のつくり方という部分が課題になっているので、今日はその辺のお話を伺えればと思っています。まずは石川さんの阿久根での活動についてお聞かせ頂けますか?
石川:僕は現在、阿久根市の観光連盟の役割も兼ねたまちづくり会社「まちの灯台阿久根」の代表を務めています。一方、阿久根に来るまでは京都でリノベーションの仕事をしていたこともあり、リノベーションや建築を軸にした場づくりの仕事を依頼されることもあります。具体的な例を出すと、まちづくり会社では阿久根の道の駅の改修・運営などを行い、個人の仕事として、阿久根の水産加工会社が運営する施設「イワシビル」のプロデュースなどを手がけています。

インタビューはイワシビルの中にあるラウンジスペースで行いました。左から石川秀和さん、中尾大樹さん。
Q. 行政が建物を新しくつくったものの、蓋を開けてみたらあまり有効に活用されないというのはよく聞く話ですが、石川さんはリノベーションや場づくりの仕事で大切にしていることを教えてください。
石川:リノベーションで最も大切なのは、何のためにその場所が必要なのか、どんなことを達成したいのかということを、そこに関わる人たちみんなが共有することなんですね。例えば、先ほどご紹介したイワシビルは、阿久根で三代続く干物屋さんが新しくつくった施設なのですが、その背景には、それまであまり若い人たちに働きたいと思っていなかった干物屋を、プライドを持って働けるような仕事に変えたいという3代目の熱い思いがあり、それを叶える手段として1階にカフェとお土産屋、2階に工場、3階にホステルが入った”職場”をつくりました。僕はリノベーションというものをコミュニケーションツールのひとつだと考えているのですが、ポイントを間違えてしまうと、伝えたいことが届けたい相手に届かないということが起きてしまうと感じています。

古ビルを改装した「イワシビル」。

1階のカフェとお土産屋さん。

3階にあるホステルのラウンジスペース。
Q. コミュニケーションをする相手もかつていた京都と、いまの阿久根ではだいぶ異なるような気もします。
石川:京都の時は、クライアントやパートナーにクリエイティブ業界の人たちが多かったですが、阿久根では1次、2次産業の人たちとの関わりが多く、土地の価値をつくっている人、地域資源を抱えている人の対象が違うということは感じます。また、京都には観光関連のメディアもたくさんありましたが、阿久根にはそういうメディアはほとんどありません。そうした中で建築の仕事などでは、年数を重ねていくほど価値が高まるもの、芯の強いものをつくるということをこれまで以上に意識するようになりました。それによって東京の雑誌などがわざわざ阿久根まで取材に来てくれたりということが実際に起きていて、自分の仕事の説得力や信頼度が増すことで、地域に応援してくれる人が増えるという側面は少なからずありますね。

石川さんが京都でリノベーションを手がけたクリエイター向けの複合施設「つくるビル」。築50年、4F建てのビルにアトリエ・カフェ・ショップ・シェアスペース・オフィスなどが入る。
Q. まちの灯台阿久根では、地元の若い人たちが「ただいま」と帰ってきたくなるまちづくりというミッションを掲げていますが、具体的な未来の目標なども設定しているのですか?
石川:まず前提として、この会社を新たに立ち上げるにあたって、地域の企業などに株主になってもらうということにこだわったんですね。それによって覚悟を持って関わってくれる人を増やしたいという思いがあったし、僕自身は、自分のことをいつでもクビにしてもらっていいというスタンスで仕事をしています。いま自分が持っているリソースが10年後に通用するとも思っていないし、その頃にはいまと別の課題も出てきている可能性があるから、その時は誰かがこの立場を引き継ぐという前提で、代表をやらせてほしいという話は関わってくれているみなさんにしています。そして、ご質問の内容に戻ると、僕が代表を務めている間に、未来のまちを担う30代前後の若いキープレイヤーを10人くらいはつくりたいということが具体的な目標です。
Q.そこから先はまた次の世代が担っていくという考え方ですか?
石川:無責任かもしれませんが、そう思っています。若い人たちが地元に帰ってくるといっても、急にUターン者が増えたり、地元での就職率が極端に上がるというのはあまり現実的ではないと思うんですね。その中で、いま会社に出資してくれている40~50代の人たちとも共有しているのは、自分たちが中継ぎの世代となり、希望の光をつくっていくために投資をしていくという意識です。現状では、阿久根で新しいアクションが起こり、雇用が増えたというようなモデルケースがまだ少ないので、僕らの役割は、いまの阿久根にない業種をつくって雇用を生んだり、限られた資源の中で新しい商品を開発していくことなどを通して、お手本を示していくことだと思っています。

「まちの灯台阿久根」がリニューアルを手がけた道の駅では、若者の雇用を意識したドーナツ屋さんも。
Q. こうした活動では地域のさまざまな人たちを巻き込んでいくことが必要だと思いますが、そうした部分で意識していることがあれば教えてください。
石川:ソーシャルデザインなどの文脈では、「コミュニティ」というものがポジティブに語られることが多いですが、これまで仕事にしてきた経験から、町おこしという観点においてコミュニティというのはむしろマイナス要因になりやすいと感じています。地域のコミュニティというのは、一緒にいて心地良い「同一者集団」で形成されていることがほとんどで、地域の人たちは自分が所属しているコミュニティをセーフティネットにしています。それは当たり前と言えば当たり前のことなのですが、まちづくりという視点で見ると、こうしたコミュニティは閉鎖性を生みやすいとも言える。僕らのようなまちづくり会社は、世代、性別、信条などの違いを乗り越えて、普段であれば会わない人たちが重なり合う機会をデザインしないといけないと思っています。それを僕はコモンズデザインという言葉でとらえていますが、これを会社のメンバー全員に強いると心が壊れてしまう。だから、組織の中にひとりそういうことを担える人がいれば良いと考えています。

石川さんが発起人である「阿久根と鎌倉」プロジェクト。阿久根の高校生や先生、仲買人、行政職員などさまざまなメンバーが毎年鎌倉に短期滞在し、鮮魚販売や食堂営業を行うことで地域の中で連帯感が生まれている。
Q. これから自分たち「リポート」が活動をしていく上で、地域の仲間を巻き込んでいくことと同時に、活動資金をつくっていくことも大きな課題になっています。資金ゼロからのスタートなので、まずは稼がなければいけないという意識が働き、なかなかその先に進めないという状況なんです。
石川:スモールスタートで良いと思いますし、いまいるメンバーで先に繋がりそうなことをまずは始めていかないといけないですよね。そして、そのためには、自分たちの究極の目的とは何か? ということを改めてメンバーで議論した上で、それを実現するためのミッションとは何か? そのミッションを実行するためにはどんなプロジェクトをつくると良いのか? ということを洗い出した方が良いですよね。その中から、現状の人や資金、ネットワークなどを踏まえて、何から始めるのかということをメンバー全員で決めていくことが大切なのだと思います。自分自身、いまのまちづくり会社にしても、リノベーションの会社にしても、そのようにスタートしています。
Q. 実は一般社団法人と同じ「RE PORT」という名前のカフェを、僕の妻が主体となって運営していて、今年で4年目を迎えました。今後はこの場所もうまく活用しながら、俵ヶ浦半島というフィールドも視野に入れて、新しいことに取り組んでいきたいと考えています。

中尾さんが中心となって運営しているカフェ「RE PORT」。
石川:僕が京都でリノベーションの会社を経営していた時は、古ビルのリノベーションやコンサル事業でお金を稼ぎ、その資金でクリエイター支援という目的のもと、アートギャラリーの運営などをしていたんですね。事業で得た利益を、お金になりにくいものに投資するという企業としては少しおかしな構造だったのですが(笑)、リポートに関しても、市街地での飲食店やゲストハウス事業など稼ぎが出せる事業と、自分たちがやりたいこと、応援したいものに投資していくような事業を分けて考えるというのはアリなのかもしれないですね。特に資金的な準備がまだ整っていない現時点で、いきなり俵ヶ浦半島に拠点などをつくることはリスキーだと思うので、まずは市街地の事業でしっかり稼げるような形をつくっていけると良い気がします。
Q. 大半が市街化調整区域に指定されている俵ヶ浦半島は、新しい事業を起こしにくいという現状もあります。
石川:それだけ特徴が異なる2つのエリアが同じ市内にあるというのはある意味とても面白いことですよね。だからこそ、お金に対する考え方も完全に変えてしまい、僕の京都時代の会社ではないですが、営利/非営利を明確に分けてしまうくらいでもいいかもしれない。例えば、俵ヶ浦半島の生産者などを巻き込んで、特産品を販売したり、イベントを開催するような飲食店兼ゲストハウスのようなものを市街地に展開してお金を稼ぎながら、半島を応援するようなことができると面白そうですし、半島での取り組みについては、うまく助成金なども活用していくというのもひとつの手だと思います。
Q. 僕は市役所の職員として働きながら、一般社団法人の代表も務めていますが、石川さんももともとは地域おこし協力隊として阿久根に入り、役所で働かれていますよね。現在の行政との関係性はいかがですか?
石川:阿久根は人口2万人程度の小さな自治体ということもあって行政との距離感は近いですし、役場の若い職員などにはこちらから積極的に声をかけて色々巻き込もうとしていて、例えば、地域おこし協力隊の研修制度を活かした呼びかけやアテンドなどもしています。役場としても、若い職員のモチベーションを高めていくような仕組みづくりをしたいようなのですが、現状ではまだ上手くできていないので、自分としてもお手伝いをしていきたい。先ほどの同一者集団の話と同じで、役場には役場のコミュニティというものが出来上がっているからこそ、彼らが外の世界ともつながれるようなコーディネートをして、インプットの機会を増やしていくということは大切だと思っています。

石川さんは、映画撮影の誘致活動なども積極的に行っている。
Q. コモンズデザインという話もありましたが、民間から行政まであらゆるところに種をまき、関係性をつくっているのですね。
石川:京都の会社の時から僕は、質の高い偶然性を生むために、質の高い計画を練るということを徹底してきました。場づくりの仕事をしていると、ある時突然、自分たちが想定もしていなかったハッピーな出来事が連続的に起こることがあるんですね。そういう体験をしてきたからこそ、いまの仕事をやめられなくなってしまったところがあるんです。そして、そういうことが起こる背景には、徹底した仕込みと積み重ねというものが必ずあって、だからこそどんなに小さなプロジェクトでも妥協をせずに準備をした上で、まちに落とし込んでいくということを大切にしています。その積み重ねによってまちの空気が高まり、質の高い偶然が生まれてくると思っています。そういう意味で自分の仕事は、農業における土づくりに似ているところがあると感じていて、本当に良い野菜を収穫するためにリサーチを重ねたり、コミュニティを醸成したり、地域資源を探したりということを一つひとつ積み重ねていくことを常に意識しています。

石川さんは阿久根で様々なイベントを手掛けている。写真は保育園で開催したワークショップの様子。
Q. これまでは飲食店というものが軸になっていたこともあり、活動に巻き込んでいく対象として視界に入っていたのは、お客さんと同じエリアの事業者くらいだった気がします。でも、今日石川さんのお話を伺って、より広い視野で地域にいるプレイヤーたちを見出し、その隠れた課題を掘り下げて、一緒にその解決に取り組んでいくことが大切なのだと感じました。
石川:まちという舞台の上には目立つプレイヤーからそうではない人までがいて、それぞれの活動や関係を尊重しながら、役割を考えていくことが大事だと思うんです。これまで僕も、自分たちの強み、周りにいる人たちや地域の資源などをしっかり把握した上で、いまどんな役割が足りていないのかということを考え、行動するということを続けてきました。そういう意味でも先ほど話したように、リポートのメンバーで話し合ってそれぞれ夢を書き出し、そこに向けて何をしていくべきかを考えていくことが大切ですし、しっかりした計画と熱意さえあれば、人やお金も集まってくるのではないかと思います。
「一般社団法人REPORT SASEBO中尾大樹さんの阿久根(鹿児島県)訪問記」はこちら
★プロフィール
インタビューされた人
石川秀和 「株式会社まちの灯台阿久根」代表
千葉県生まれ。京都の家具製作工房や不動産会社を経て2007年に建築デザイン事務所 「sahou design」、2008年に株式会社HLCを設立。
2015年に京都市から阿久根市へ地域おこし協力隊として移住。専門領域はリノベーション、コミュニティデザイン。協力隊任期中は「イワシビル」「阿久根と鎌倉」「PARK-PFI」など、地域資源を活用した地域おこし事業を企画。協力隊退任後、阿久根市観光連盟事務局長に就任。2019年4月に「お帰りなさいをつくる」をコンセプトに同観光連盟を民営化。自主財源運営と若者が働きたくなる雇用作りを目指し日々奮闘中。
インタビューした人
中尾大樹 佐世保市役所(企画部 文化振興課)主任主事/
一般社団法人REPORT SASEBO代表理事
大学卒業後、Uターン入庁した市役所で出会った仲間と佐世保を再発見する自主研究活動「RE PORT」をスタート。イベント企画、運営等に携わった後、リアルな場づくりの必要性を感じ、2015年、妻と同名のカフェを立ち上げる。
その後も公私それぞれの立場を行き来しつつ、様々なまちづくり活動に参画。
2019年これまでの活動を統合、業種を越えた新たな仲間を迎え、一般社団法人REPORT SASEBOを設立し、ホテルや観光プログラム開発など目下新プロジェクトの準備中。夢は佐世保市内での海山街の3拠点居住。
俵ヶ浦半島の豊かな食材を使った新商品の開発へ!
俵ヶ浦半島の豊かな食材を使った新商品の開発へ!
Photo / Koichiro Fujimoto
■ 豊かな食に恵まれた俵ヶ浦半島
赤土の畑で採れた野菜や九十九島の海で育った海産物など、俵ヶ浦半島にはその豊かな自然の恵みがたくさん。
チーム俵が運営する「半島キッチン ツッテホッテ」では、名前の由来が「地元の食材を『釣って掘って』」であるように、新鮮な野菜や果物などの直売に加え、地元食材を使ったコロッケや旬の果実を使ったドリンクを提供し、その魅力を発信しています。
また、半島の食の豊かさをさらに伝えるべく、チーム俵・ご当地部を中心に生産者の方々との意見交換会を開催。農産物を活用した加工品づくりやツッテホッテでの販売促進など、そのアイデアを出し合ってきました。

昨年1月に開催した、俵ヶ浦半島の農産物の活用に向けた生産者との意見交換会。
■ 俵ヶ浦ならではのメニュー開発に向けて
そうした中、俵ヶ浦町の女性グループが、調理施設をつくって「マザーズたわらんだ」を結成。
最初は地元の会合に料理を出していましたが、その美味しさが評判となり、今では市内の直売所に卸すようにもなりました。そこで、マザーズたわらんだの皆さんと一緒に新たな飲食メニューの開発を進めていくことに。
新商品の開発にあたっては、俵ヶ浦半島産の食材の美味しさが味わえる、その魅力が伝えられるメニューでなければなりません。また、普段なかなか味わえないような、他の地域とは違う特色を出していくことも重要だと考えています。活用する地域産品の選択、飲食メニューの検討などは、専門家である料理人の近藤直子さん、フードコンサルタントの小野聖史さんにもアドバイスをもらいながら進めてきました。
■ 地域の特色と季節感が味わえる「おこわ」の開発
展海峰に来られるお客さんからは、コロッケと一緒に食べられる主食的なメニューや魚介類を使った商品を希望される声も挙がっていました。そこで、風味が濃厚な牡蠣や俵ヶ浦半島の旬の野菜を活かせるメニューとして、「おこわ」の開発に絞り込みむことに。おこわは素材の旨みを十分に引き出すことができ、旬の食材を活用することで季節感や地域感を出すことができます。
また、佐世保には、いりこやあごのように極上の出汁が取れる材料があります。最近では自宅で出汁をとる家庭も少なくなっていると聞きます。出汁にも地場産品を積極的に活用することで、その普及にも役立てられれば、との思いも込めました。
10月、翌日に控えたコスモスウォークでの試験販売に向け、マザーズたわらんだの皆さんとおこわの試作を行いました。専門家と相談しながら食材を出し合った結果、旬の秋ナスとミョウガのおこわ、半島の特産品であるジャガイモとひじきのおこわ、ジャガイモと青菜のおこわの3種類を作ってみることに。
おこわは、それぞれ食材を活かすためにひと工夫。ジャガイモには柚子の風味を加え、ナスは皮をきんぴらにして、食感も楽しめるようにしています。
この日はおこわの他にも新鮮なエソを使った「魚ロッケ」も試作。食べ比べながら、さらなる味の工夫に向けて議論を重ねました。

専門家の近藤さん(左)に調理の工夫を教わるマザーズたわらんだの皆さん。

ナスの皮は細かく刻んで食感のアクセントに。

食材の仕込みにも工夫を加えた、ナスとミョウガのおこわ。

ジャガイモのおこわ。ジャガイモは一度素揚げして柚子の風味をプラス。爽やかな香りが広がるおこわに。

完成した3種類のおこわ。

エソのすり身に野菜を混ぜ合わせ、ふわりと揚げた特製魚ロッケ。

試食後、専門家の方々と熱心に意見を交わします。
■ コスモスウォーク会場にて「俵ヶ浦半島 季節のおこわ」を試験販売
そして迎えたおこわの試験販売当日。
前日に試作した3種のうち「秋ナスのおこわ」に絞って調理・販売を行いましたが、大好評であっという間に完売となりました。魚ロッケも早々に売り切れ、新商品に対する期待度の高さが伺えます。

コスモスウォークのブースで行ったおこわの試験販売。
チーム俵ご当地部で、マザーズたわらんだの長谷川紀美枝さんは、
「おこわと言えば山菜や赤飯のイメージでしたが、ナスやジャガイモなど、いろんなメニューが作れるのは意外でした。最近では私自身もおこわを蒸す機会が減ってきたのもありますし、皆さんも普段食べる機会が少ないこともあって買ってもらえたのではないでしょうか。魚ロッケも俵ヶ浦半島らしく、分かりやすくて良かったのかも。これから実際の販売に向けて、きちんと考えていかんとですね。」
と振り返ります。
俵ヶ浦半島特産のジャガイモやひじきに加え、秋はなす、冬は牡蠣……と俵ヶ浦半島の旬の食材に合わせて様々な味わいが楽しめる「俵ヶ浦半島 季節のおこわ」。
現在、新たな季節の食材を使った試作を行なっています。早く皆さんにお届けできるよう、調理や提供、販売の方法などの検討も引き続き進めていきたいと思います!
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